sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて 冷たいシャンパンと 届いた本と手紙に気持ちが緩む、 感じ

映画:ぼくを探しに



あの素晴らしく切ないアニメ→「イリュージョニスト」の監督なのね。
アニメの苦手なわたしも舌をまく、素敵な映画でした。
そして「ぼくを探しに」は去年の映画で、見逃してたものです。
アメリ」的なフランス映画と思ったら、実際に「アメリ「のプロデューサーだし、
公式サイトにも>カラフルで切なくて、キュンとくる!『アメリ』『タイピスト!』
『ムード・インディゴ うたかたの日々』などを思わせるフランス映画のエスプリが
たっぷりつまった、ファンタジックで奇想天外なハートウォーミング・ストーリー!

って書いてあるし、メランコリックでファンタジックでふんわりカラフルな
アメリ系映画と思ってたら、なんと、支配と抑圧と差別と許しの話でした・・・。

ポールは2歳の時に両親を失って以来、口がきけない。きかないのかも?
母の姉、双子の伯母に育てられ、今は二人のダンス教室のピアノ弾きをしている。
母の家族は音楽家一家で、母もピアノを弾いていたらしく
ポールも毎年コンクールに出ている。
ある時、同じアパルトマンに住む風変わりな女性と知り合い
彼女の不思議なハーブティで失っていた過去を思い出していく、というお話。

最初のシーンで、失われた時を求めてプルーストの言葉が出てきますが
映画の中の不思議な女性もマダム・プルースト
彼女のハーブティとマドレーヌで過去を思い出すをいうのはわかりやすい。

そのあと、ダンス教室のシーンで
メヌエットは三拍子。18世紀クラシックの時代。理性、秩序、輝き。
ワルツは19世紀ロマン主義の時代。シャトーブリヨン・メンデルスゾーン
ジャバは体をぴったり密着。20世紀アウシュビッツヒロシマチェルノブイリ
アスピリン?いやアスピリンは19世紀の終わりだ。
というセリフとともに、それぞれのダンスを雑多な人たちが踊るシーンがあって
その人々の多様さが、なんか楽しくて好きです。
ちなみにこの映画では、使われる音楽も聞こえる音楽も全部三拍子のものだけらしい。
監督曰く「ディスコチューンを含めた楽曲すべてを三拍子にしました。
三拍子でダンスを踊るときは、子供をゆするように、
或いは腕に誰かを抱えるように体を動かすからです。
それは温かく、まるで母親のようです。」
三拍子の音楽にあってる映画です。
途中、唐突にミュージカル調になるところもあるのですが、そこも全部三拍子なのね。

タイトルが、世界的に有名な絵本とそっくりなので、
なんかそういうパクった感じの話なのかなと不安だったけど全然違った。
そもそも邦題がそういう風になってるだけで
原題は「Attila Marcel」。
アッティラ・マルセルというのはポールの父親の名前です。
その名が歌になってて、DVをするひどい暴力男だと聞かされてきたポールは
母が恋しい分、父を疎んで生きてきたのですが、本当の記憶を辿るうちに
間違いに気がついていきます。
プロレスとダンス(三拍子だけどタンゴっぽい)のシーンが混じり合うところもうまい。
どちらも二人の人間の真剣なぶつかり合いではありますからね。

ポールの伯母の双子は、最初からなんだか気味が悪いです。
途中、中国人に対するひどく差別的なセリフを言うところが出てくるし、
思ったほどあくどくはないけど、無自覚に支配力をふるうところは
本当にぞっとするし、やめて!と思ってしまう。
でも、最後には、そうやってずっと自分を支配・コントロールしてきた存在を、
許す映画です。許す部分の葛藤は省略されてる。あっさりと丸ごと省略。
そこだけで映画が作れるかと思うほど、本当は難しいことだと思うんだけどな。
支配から解き放たれ、自立し、許すことって。
まあ許せる人は許せばいいとは思う、それができれば本当に素晴らしい。
(でも許せない人に許しを強要するのは嫌いですけど)

思ったような甘ったるさはなく、いい映画でした。
映画の中でポールがいつもたくさん食べてるシューケットというお菓子が食べたい。
シュークリームの皮にお砂糖がかかったようなお菓子らしいです。
でも、それなら、クリーム入りの方がわたしはいいかな。笑